Talk Show MJ Interview: 序破急

庵野秀明、貞本義行、山賀博之の発言集、作品に関する資料などを掲載

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模型情報 1986年11月号 より
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10回観た映画は『がんばれベアーズ 特訓中』。

 公開を来春に控えた劇場用映画「オネアミスの翼 - 王立宇宙軍」。その制作で大忙しのスタジオに監督であり、また脚本も執筆された山賀博之さんを尋ね、インタビューをさせていただいた。その熱っぽい語り口は、この作品に賭る意気込みを十分感じさせてくれた。

模型情報編集部(以下MJ)

今日はお忙しい所申し訳ありません。

山賀博之氏(以下山賀)

どういたしまして、ムズカシイ質問が多くなければいいのですが。

MJ

山賀さんは幼いころから“自分は監督である”と思い込んでいたとお聞きしたんですが。

山賀

いや、高校3年生の時に宣言したんです。ある日、「カプリコン1」という映画を見まして、面白かったので何か本に載っていないかなーと映画雑誌を見たんです。その中で淀川長治が読者の監督になりたいという質問に対して“1本の映画を10回見なさい”と言っていたんです。それで「へー10回見たら監督になれるのか」(笑)と思って1本につき10回ずつ見ているうちに“自分は監督である”と思う様になって今日に至る訳です。

MJ

その他に何か特別な活動はしてらしたんですか?

山賀

いえ、特にしていません。仕事がないのは自分が高校生だからだ(笑)と思っていましたね。

MJ

初監督という事ですが、何か映画を作る上での身上をお持ちですか?

山賀

まあプロ作品の監督は初めてですがアマチュア時代に何本か撮っているので……とにかく妄想がスゴかったですから、自分では高校3年生の時から仕事は無いにせよ監督だと思っていたので、身上は考えてありました。 どういう映画を作りたいかと考える前に、なぜそういう映画を作らなければならないか? 今どういう欲求があって、どんな材料があるか、そこから何を作ればいいかという事から考える様にしています。それだけは守る様にしています。

MJ

よくアニメファンなんかで、僕はパワードスーツが見たいんだとか、カワイイ女の子を動かしたいんだとか思って映像を作る人がいますが、そういう欲求で作られる訳ではないんですね。

山賀

そうですね、“自分は監督だ”という所からそもそも始まっていますから。

MJ

映画を作る上で具体的に、どのパートが重要だと思いますか。

山賀

アニメーションで言えばアニメーター、実写でいえば役者でしょうね。最近監督が出てくる(出演という意味ではなくて)、この監督はこうだなって解る作品がありますが、あれはあまり好きではないんです。アニメーションと実写を分けるつもりはないんですが、映画はやはり役者のものであり、アニメーションでいえばアニメーターのものであると思うんです。その辺が崩れてきて最近の映画はつまらないんじゃないかな? と思う訳です。

MJ

そこが今回の作品の注意点でもある訳ですね。

山賀

そうですね、今回の作品は色んな所に無理を言って、監督の領分というのを、何と言うか明彩をかけて、いかに監督がいない様にするかという事に苦労しました。それでいてまとまっていて最後に監督の存在に気付いてくれればなと思っています。

MJ

いきなり本題ですが、「王立宇宙軍」のテーマは?

山賀

一言で言ってしまうと“現実はいい”という、この一言だと思います。この“現実”を表現する為には様々な事柄が関わり合ってふくらんでいく、そんな所がこの映画のテーマであり、面白い所だと思うんです。要するに現実を否定する方向で物作りをするのはもの凄く楽な訳です。人間誰でも、まあ世の中に対してでも、自分に対してでもいいんですが文句があると思うんです。この文句に合せて作品を作るのは楽なんですが、この文句を核にするのではなく、文句が出る以前の現実をテーマにし、現実を見直してみれば……という事ですね。

MJ

この映画の企画の発端はどこから出てきたんですか?

山賀

一番最初に出てきたのはまだ大学に通っている時なんですが、私の大学の建て物が変ってまして、コンクリートの打ちっぱなしの多面構成の物があちこちに建っているんです。その大学の坂道を登っていくとその自分の行くべき校舎が森に囲まれていてお城の様に見えるんです。これを見ていて、鉄とかガラスとかコンクリートで出来ていて中に電気が通っているお城で何か出来ないかな、というのが核になっています。

MJ

質問が少し前後してしまいますが、この映画の主人公達の性格、主人公達で表現したい事はありますか。

山賀

そうですね……主人公達は典型的な現代っ子である訳です。現代っ子というのは70年代に言われた古い意味の、ですけど、その現代っ子達が少し大人になって増々訳が解らなくなって新人類という差別用語(笑)で括られている。何でこの人達が新人類と呼ばれているのか、という所も解明したいと思っています。

MJ

作品の具体的な所についても少しお聞きしたいんですが、演出上で注意された点はありますか?

山賀

えーと、両極端なもの、明るい、暗いとか冷たい、熱いとか、とにかく背反するものを多く混ぜていって、どこかで上手いこと融合してくれたらな、と思っています。映画を見終った後でどっちかに片寄っていると少し心配だな、ていう感じですね。

MJ

実際に画面を作る時に注意されたことはありますか?

山賀

光ですね、今回の映画はまず異世界を作るというのが前提でしたから、その異世界が空間として存在する為に現実との共通なパーツである光を使って異世界との繋がりを作ってやろうと。その点では光には注意しました。

MJ

今、異世界という話が出ましたが、全くの異世界を作るのに注意した点、例えばメカニックですとか背景などでお話ししていただきたいんですが。

山賀

変った形を作るというのは比較的簡単に出来ると思うんです。しかし変っている形だけ並べても統一された世界というのは出来てこないんですね。やっぱりベースとなるのは現実なのであって、異世界という全く現実離れした所で遊ぶのではなく、現実のひとつひとつのパーツを細かいところで引っ繰り返していって今まで見た事もない様な町にしちゃうという方法ですので、とにかくどこかで見た事のあるデザインというのを心掛けていますし……

MJ

今までの方法論とは逆ですね。

山賀

そうですね。で、見た事があるというのは、飛行機なら飛行機で見た事があるというのではなくて、例えばヘアドライヤーのここの曲線が飛行機のここの部分の曲線に似ているとか、何というか肌触り的な物をどこかに残しておかないとマズイ、違和感が出てしまうという考え方でデザインしています。

MJ

生活用品もかなり綿密に設定されていますが、全体的にノスタルジックですね。

山賀

実感を追求するとちょっと古くなるんですね。新しい物というのは現実感を無す方向にデザインしていると思うんですが、それを単に絵にしただけでは余計実在感を無くしてしまうので、やはり10年、20年さかのぼってデザインしないと辛くなってしまうんです。同じ意味で建物なども曲線を中心としたノスタルジックなデザインになっているんです。少々曲線を使い過ぎたかなとも思うんですが。

MJ

現実から離れる為に曲線が必要だった訳ですね。

山賀

そうですね。曲線と言っても渦巻の様な規則的なものではなく、どこへ行くやら解らない様な曲線ですね。アールデコの様式なども取り入れています。

MJ

ひと通りお話しをうかがいましたが、ここで「オネアミスの翼」を離れて少し。

 ダイコンフィルムには熱烈なファンが居ると思うんですが、そのファンに一言。

山賀

そうなんですか?(笑) 誹謗中傷しか聞いた事が無い(笑)。高いとか(笑)。

MJ

そんな事はないですよ。

山賀

まあ冗談はさて置き、ああいった物は見るより作る方が楽しいですよと言いたいですね。

MJ

気の早い質問で申し訳ないんですが次回作はどんな物を作りたいですか?

山賀

やっぱり女の子が水着の様なカッコウで出て来て超能力が使えるというヤツがいいですね(笑)。

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